自然によりそう暮らし
ひょうたんで表現するアトリエ「カラヴィンカ」が教えてくれる、ありのままの美しさ #1
※ 全2話の 1話目
糸島・二見ケ浦が見える高台に立つアトリエ「迦陵頻伽(カラヴィンカ)」。アトリエのオーナー、龍石修さんは無農薬でひょうたんを栽培。ひょうたんを加工したスピーカーやランプを制作しています。糸島に移住し、ひょうたんを使った創作活動をはじめた龍石さん。ひょうたん栽培を通して見えてきたものやその魅力、そしてひょうたんに込める思いを伺いました。

糸島移住後、ひょうたんのとりこに
熊本県出身で2008年に福岡県糸島市に移住してきた龍石修さん。福岡市の中心部で中古レコードショップ「カラヴィンカミュージック」を経営しています。自身で演奏や作曲を行い、さらにはDJとして30年以上の経験を持つ多彩な龍石さん。糸島市に移住後は、ひょうたんアーティストとしても名前を知られるようになりました。

龍石さんの活動拠点は、アトリエ「迦陵頻伽(カラヴィンカ)」。ここで、ひょうたんを使ったスピーカーやランプを制作・販売しています。アトリエでは、作品の販売だけでなく、ランプ作りができるワークショップも開催。女性を中心に人気を集めています。
「レコードの販売や音楽活動もおもしろい。でも、ひょうたんでランプやスピーカーなど自分を表現したいものを作る魅力にハマって、ひょうたんへの比重がどんどん重くなっていったんです」
そう教えてくれました。
聴き疲れしない、ひょうたんスピーカー

龍石さんとひょうたんの出会いは、糸島市への移住前にさかのぼります。
「友人から譲り受けたのがはじまり。そこで、ある音楽イベントに参加したときに、ひょうたんスピーカーを使ってみたのですが、音がとても心地よくて」。
音に惚れ、自宅でも楽しむようになったそう。その後、「より田舎で暮らしたい」と、音楽イベントなどで訪れたことがあった糸島へ移住を決めました。
「移住したタイミングで、友達家族と一緒に耕作放棄地を開梱して田んぼを作って、お米の栽培を始めました。畑もあるし、せっかくならひょうたんも自分で栽培してみようかなと。そんな軽い思いつきでした」。お米の栽培のついでとばかりに笑う龍石さん。種を手に入れ、はじめてのひょうたん栽培がスタートしました。

「自作してみたら、最初にしては思いのほか良いものができたんです。友人もほしいと言ってくれて、これはいけるかもしれないぞと、調子に乗りました(笑)」。はじめて作ったひょうたんスピーカーは、龍石さんの大きな転機に。こうして、1年、2年と続き、現在15年目を迎えました。
龍石さん曰く、ひょうたんスピーカーの魅力は「室内全体にふんわりと広がる音」です。
「一般的なスピーカーって、人を狙って音が飛んでくるんです。聞くための定位置が決まっている。でも、ひょうたんスピーカーは無指向性で、どこから音がなっているのか、わからない。だから聞いていて疲れないんです。自然の音や水の音との相性もいい。コロナ禍で住環境を良くしたいと考える方が購入を検討されるケースも増えました。音楽を聞くというよりも、BGMを流すためにあるようなスピーカーです。空間全体にふんわりと広がって、主張がなく、でも住空間を居心地の良いものにしてくれる。今の時代に求められるスピーカーだなって思います」。
全国的にも珍しい大規模ひょうたん畑

「今は、一年の半分がひょうたんを栽培する農家ですね」と笑う龍石さん。春から夏はひょうたんの栽培が中心、秋から冬にかけてはひょうたんランプをはじめとした作品の展示会やワークショップがメインとなります。この春植えたのは300株。秋には1000個を超えるひょうたんが収穫できる予定です。
とはいえ、多くの人はひょうたんの栽培現場を知ることはないでしょう。器や楽器、パイプなどさまざまな用途で古くから親しまれてきたひょうたんですが、そもそも実には毒があり、食用にはなりません。現在、日本でひょうたんを栽培する目的の多くは、鑑賞のため。一部の愛好家が、少量の株を育てているケースがほとんどで、栽培農家は非常に少ないのです。糸島でも、ひょうたんを大規模栽培する人はいないため、始めた当初から試行錯誤が続いています。

「栽培方法は独学ですね。始めた当時は、ネットで調べても情報は出てこなかったし。そもそも、ネットで調べるのがあまり好きじゃないんです。なるべく自分でやって考えて、失敗して…その過程が楽しい。今でも思い通りには育ちません。でも、どうなるか分からず模索していくのが、おもしろさだと思っています」。
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