ひょうたんで表現するアトリエ「カラヴィンカ」が教えてくれる、ありのままの美しさ #2

※ 全2話の 2話目

ピンでひとつ、穴を空けるだけでも自己表現

「春は小さい種だったのに、6月のおわりにはこんなに大きくなって。自然のダイナミクスがすごい!」と龍石さん

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スタート時はスピーカー制作のためのひょうたん作りでしたが、実ったひょうたんすべてがスピーカーに加工できる訳ではありません。サイズが小さすぎたり、形がいびつだったり。

「どんどん使えないひょうたんが余っていったんです。でも、捨てるのはかわいそうだからどうにかしないとと思って」。

そこで思いついたのが、ひょうたんランプです。

「以前から、ひょうたんランプの存在は知っていました。ただ音楽とはまったく関係がなかったし、自分の趣味じゃないかなって(笑)。でもたまたま余ったひょうたんに押しピンで穴を開けてみたんです。誰でもできる単純な作業なのに、いろんなデザインが表現できることがおもしろくなってきました」。

ワークショップのはじまりは、自分が好きなひょうたんを選ぶところから。大きさもフォルムも異なるひょうたんを選ぶ時間もお楽しみに。

そこからは、ランプに加工しやすく光がすけやすいように、皮が薄いひょうたんを栽培するように。「スピーカー用途ではB級品でも、ランプ用なら適しているものも多くて」と話す龍石さん。アトリエには、くねりと愛らしく曲がったひょうたんのランプや、シミをいかしたひょうたんの一輪挿しなどが並んでいます。

アトリエにはランプを並べた部屋も。左端のように、全面に穴が空いたタイプが人気

カラヴィンカで体験できるひょうたんランプのワークショップは、2時間ほど。中をくりぬき加工されたひょうたんを選び、デザインを決めて、押しピンなどで穴を空けていくシンプルな作業です。電球はすでに用意されているので、穴を開け終えたら被せるだけでできあがり。誰でも気軽に体験できるのが魅力です。

「やりはじめると、皆さん、もくもくと集中して作業されますね。普段の生活で3時間もずっと集中することって少ないし、終わったら疲労感もあります。でもひょうたんランプづくりは充実感があって、すっきりしたと言われる方が多いんです」。

時間内に終わらなかった作業を、自宅で行う人もいます。毎日、寝る前の10分だけランプ作りを行う時間が、癒やしのひとときになっていると伝えてくれたそうです。

「世の中全体が、ものにあふれてきていますよね。新しいものが出たら買って、古いものは捨てての繰り返し。店に陳列されたものからしか、ものを選ぶことができない。その選択肢の少なさが、息苦しさになっているんじゃないかな。だから自分で作ったものを使うときって、格別の喜びがあるんです。ピンでひとつ小さな穴を空けるのだって、自己表現。愛着も湧きますしね。今の時代が求めているものがあるのかもしれません」。

畑に実る、自然そのままの姿が美しい

ワークショップでもらえる、カラヴィンカオリジナルの冊子。歴史や栽培についてなど、ひょうたんにまつわるさまざまな情報がコンパクトにまとまっている

龍石さんはかつて、凝ったデザインのひょうたんランプを作っていました。しかし今はシンプルなデザインが多くなってきたとのこと。ひょうたん全体に無数に、無作為に穴を空けたデザインは、ワークショップの参加者にも人気です。

「ひょうたんって、畑で実っている姿が一番美しいんです。だからあえてデザインを入れなくてもいいかなって。ただ全面に穴を空けるだけで、ひょうたんそのものの形を際立たせることができる。畑を続ける中で自然に寄り添うようになり、自然のままが美しいんだなって思うようになりました。自分の中で考えが変化してきたんだと思います」。

ふとしたきっかけではじめたひょうたん栽培。風で株が倒れてしまったり、大雨で根腐れしてしまったり、自然に翻弄されたことも少なくはありませんでした。そんな自然が作り出してくれたひょうたんのありのまま姿を「美しい」と話す龍石さんは、まるで子どものようにひょうたんを慈しんでいます。その優しい眼差しに、こちらの心もほっとほぐれていくようでした。

語り部一覧

迦陵頻伽(カラヴィンカ) ひょうたん作家 /
龍石修さん
熊本県天草市出身。
大学卒業後、希少な中古レコードを探すバイヤーに。
北欧や南米などおよそ20カ国を訪問。同時に、DJとしても30年以上活動している。
2008年糸島に移住。その後、ひょうたんを使ったスピーカーやランプを制作。
現在はワークショップや講演、空間演出など、ひょうたんを軸にさまざまな活動を行っている。

体験一覧

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