木こりと音楽家が届ける。森と音楽で心を取り戻し、自然の循環を“感じる”時間 #2

※ 全2話の 2話目

はるか昔、言葉よりも先に生まれたといわれるコミュニケーションツールが「音楽」。かつては森の中で火を焚いて、音を鳴らして仲間と踊り、心の底から笑う時間があったことでしょう。そんな原始的なひとときを今に再現するのが、木楽家(もくがくか)・薦田雄一さんと音楽スタジオ「Green chord」の福田 亮祐さんです。木こりと音楽家という不思議なタッグのお二人ですが話を進めるうちに、森と音楽を通して心を解放するヒントが見えてきました。

声を上げて笑う“ラフター”となり、心の温度を上げる「OTOCAMP」

2023年11月に開催された「OTOCAMP」の様子

そんな思いを共有すべく、福田さん、薦田さんが仲間たちとともに開催するのがキャンプフェス「OTOCAMP」(オトキャンプ)。木々に囲まれた会場でキャンプを楽しみながら、バンドコンサートのほか間伐材へのペイント体験や登山まで楽しめる盛りだくさんのイベントです。

「うまいやつだけがステージに上がるんじゃない、下手でもいい。見るんじゃなくて、参加しようって。“森で生まれた楽器を使って、みんなで応援して、みんなでいい世界を作ろうぜ”っていうロックの心です」

はじめは家族や仲間同士といった小さな単位で音楽を聞いて楽しんでいた参加者が、徐々に音を鳴らして、リズムを取って、踊り出して……。普段のイベントでは、周りを気にして大きな音を鳴らせなかったり、リズムに乗り切れなかったりする大人たちも、山の中では自然体で楽しみ、高揚感に包まれ、会場全体が一体となるグルーブが生まれると言います。

「世間体なんて本当はないのに。大人って勝手に自分でイメージして、自分でブレーキかけちゃうんです」と福田さん

そんな会場の様子を思い浮かべながら、「OTOCAMPにはラフターしかいないんです」と話すのは薦田さんです。

「笑いって、“スマイル”と“ラフ”の2種類があるんです。猿が喧嘩をするときに『参った』って歯を見せるのがスマイル。みんな、強いボスにはスマイルするんです。でも、ボスはみんなと一緒に楽しみたいから、声を出して笑う。それがラフ。日本人って今、スマイルばっかりしているんですね。愛想笑い。それをもっと、思わずこぼれてしまう笑い声を上げる“ラフター”を増やしたいんです」

OTOCAMPで、間伐の大切さや自然循環の仕組みといったことを言葉にすることはありません。でも、「森林浴」で心地よさを感じるように、私たちの体は森の中では自然と体の緊張が緩み、リラックスできるようにできています。そんな環境の中、集まった人たちと火を囲み、音を鳴らして笑い合う原始的なひとときを過ごすことで、無意識のうちに自分たちにとって大切なことにたどり着いているのかもしれません。

理屈ではなく“感覚”で、子どもたちに伝えていきたい

「こんな変なおっさんでも生きていけるぞ!ってところを子どもたちに見せたい」と笑う二人

さらにもう一つ、お二人がそろって話してくれたのが「もっといろんな大人の姿を子どもたちに見せたい」ということです。

「100年先の子どもたちの笑顔を考えたときに、“感覚”を次の世代に残していきたいんですよね。例えば子どもが大人になった時、『山を削ってメガソーラを立てよう』っていうプロジェクトの判断を担当することになったとして、企業の利益は生むかもしれないけれど『それって素敵じゃないよね』って。ふと思ってくれるような子に育ってくれないかなって。僕たちが木や森と関わる姿を見て、理屈ではない“感覚”を伝えられたら」と薦田さんは話します。

将来の展望について尋ねると「教育に対しての音楽的なアプローチって2世代、3世代とずっと続けて、理想まで辿り着けるかどうかだと思うんです。だから、僕が全てをやろうとは思っていなくて。僕が動いている姿を見ていた子どもたちの中から、追いかけてくるやつがでてきたらいいな」と福田さん。

森と音楽の力を借りて、自分らしく、がむしゃらに、でも声を上げて笑って生きる大人たちの姿を見て、子どもたちは何を感じてくれるのでしょう。「上手くなくてもいい、きれいに見せなくてもいいから、シンプルに楽しいことをしよう」と笑う木こりと音楽家の姿は、心の壁を壊してくれる不思議な魅力を持っています。

語り部 プロフィール

木楽家(もくがくか) 薦田 雄一(こもだ ゆういち)さん
糸島市出身。木こりとして自ら山に入りながら、間伐材を家具や木工品へと加工する「木工房moqu cOmo(モクコモ)」を主宰。福田さんと出会ったことがきっかけとなり、カホンやブンネといった木楽器の製作も手がけている。

糸島の音楽スタジオ Green chord 福田 亮祐(ふくだ りょうすけ)さん
福岡市出身。大学を卒業後、いくつかの職を経て糸島市に移住。築90年の古民家をリノベーションした音楽スタジオ&カフェ「Green chord」をオープンした。「音楽を共通言語に0歳から100歳までを楽しむこと」を目標とし、毎年11月にはキャンプフェス「OTOCAMP」を開催している。

木こりと音楽家が届ける。森と音楽で心を取り戻し、自然の循環を“感じる”時間 #1

語り部一覧

木楽家・音楽家 /
薦田雄一さん・福田亮祐さん
薦田雄一さん
木楽家(もくがくか)/糸島市出身。
木こりとして自ら山に入りながら、間伐材を家具や木工品へと加工する「木工房moqu cOmo(モクコモ)」を主宰。
福田さんと出会ったことがきっかけとなり、カホンやブンネといった木楽器の製作も手がけている。

福田亮祐さん
糸島の音楽スタジオ Green chord/福岡市出身。
大学を卒業後、いくつかの職を経て糸島市に移住。
2015年に音楽スタジオ&カフェ「Green chord」をオープンした。
毎年11月にはキャンプフェス「OTOCAMP」を開催する。

体験一覧

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