おいしく食べて解決!放置竹林から生まれたメンマで、竹林を地域の資源へ

きっと一度は目にしたことがある放置竹林。手入れが行き届かないまま荒れた竹林は、周囲の樹木の健全な成長を阻んだり、土砂災害で大きな被害を起こす原因になったりしています。

そんな竹林問題を「おいしく食べて解決」する取り組みに励むのが、糸島市で飲食業・飲食加工業を営む古賀貴大さんです。古賀さんが放置竹林から生み出すのは、ラーメンの具材でおなじみのメンマ。全国に広がる放置竹林問題を解決する糸口になればと、糸島を拠点にメンマ製造のノウハウを各地に伝える古賀さんに、取り組みへの思いを伺いました。


「農家の助けになる商品を」きっかけはコロナ禍

ーー「レストランITOSHIMA by Salute」「自然由来 とんかつ 香」と糸島市内で2つの飲食店を営まれていますね。古賀さんのご出身は長崎と伺いましたが、糸島にはどのような縁で移住されたのですか。

20代のころ、長崎や福岡、東京で飲食業を経験し、さらに海外でもいくつかの飲食店で料理を学びました。帰国後は、長崎県でイタリアンレストランを3店舗経営し、4店舗目として福岡市への出店を検討していたんです。

物件を見に福岡市へ行った帰り、たまたま食事をするのに立ち寄ったのが「レストランITOSHIMA」。ちょうど前のオーナーの方が引退を考えていた時期で、譲り受けることになったのが糸島移住のきっかけです。コロナ禍前でしたが、日本全体が元気がないなぁと思っていた時期でした。でも、糸島はまちが元気で、ビジネスの場にもいいなと思ったんです。

ーー飲食店の経営を中心に事業をされていたのですね。では、メンマの加工販売はどういったきっかけからはじまったのでしょう。

きっかけは新型コロナウイルス感染症です。緊急事態宣言で飲食店の営業ができなくなってしまって。外食ができなくなった分、スーパーの食品売り上げが上がったというニュースを見たので、じゃあ加工品を作ってスーパーへ卸そうと考えたんです。

実は、そのころ飲食店の経営に疲れていたというのもありました。「レストランITOSHIMA by Salute」に続いて、「自然由来 とんかつ 香」も開業したのですが、従業員を抱えていることもあって「お金のために」働いていたんです。どんなに忙しくても、休まずに、お金を払うから残業してくれと従業員に頼むこともあって。ブラック企業のやり方ですよね。だから、コロナ禍でレストラン経営ができないってときに内心、「あ、良かった」って思ったんです。これで辞められるって。でも「働きたい」と言ってくれる従業員がいたから、これを機に働き方改革を始めたんです。

築90年の古民家を改装した「自然由来 とんかつ 香」。約2000坪の竹林が隣接している。「買い取った時、今は駐車場として利用している場所も竹林でした。建物の床を突き破って生えている竹もあったんです」と古賀さん

レストランはお客さんがいてもいなくても、営業時間通りにオープンしないといけないし、閉店が予定より遅くなることも多い。でも加工場であれば、平日の午前8時〜午後5時の決まった時間に働くことができます。そこで飲食店と加工食品製造の2本柱で行くことを決めました。

じゃあ、何を売ろうってなった時にまず考えたのは「おいしいもの」。でも、今って安くてもクオリティが高いものが多く、そもそもまずいものってそんなにない。そこで、農家さんの助けになるような商品を開発しようと思ったんです。

コロナ禍で店が営業できなくなった時、飲食店には補助金制度が設けられたんですが、農家さんにはそれがなかった。いつも僕たちが商売をするための食材を作ってくれている農家さんが、少しでも助かるような商品を作りたいと思って、辿り着いたのが「メンマ」だったんです。

山をきれいにしながら、地域の雇用創出へ

竹林をもっと楽しんでもらえるようにと、「自然由来 とんかつ 香」に五右衛門風呂を建設中。湯を沸かす際には、竹炭を使う予定だ

ーーメンマの製造が農家さんの助けになるというのは、どうしてですか?

僕たちが作る「無限メンマ」は、糸島市の放置竹林に生えたタケノコを使ってできています。放置竹林は、全国各地で見られますが、実はいろんな問題を抱えていて、その一つが「獣害」の温床です。

人が入らなくなった竹林はイノシシやシカといった獣の住処になり、エサを求めて周辺の畑に降りてきては荒らしてしまいます。このほかにも、竹が生い茂るエリアは日光の日が地面まで届かなくなり、ほかの植物が育たなくなることも。また、竹は根が浅く横に張るため大雨で土砂災害が起こりやすく、被害も大きくなりがちです。

そのためメンマを作るために放置竹林を手入れすることは、山がきれいになり、農家さんだけでなく地域の課題も解決できるようになると考えています。

ーーメンマ作りが放置竹林問題解決のための一手となっているのですね。地域の厄介者である竹を地域で消費することは、ほかにどんなメリットがあるとお考えですか。

今は問題となっている放置竹林ですが、昔は竹を使って作る日用品や建築材などで使われていたもの。竹があることで助かっていた時代があったんです。今、国は食料自給率を上げることを呼びかけていますが、竹林に生えたタケノコは食料とすることができます。

あとは、地域の雇用創出です。メンマに加工するタケノコは4月中旬から5月の大型連休ごろまで、短期間で収穫しているのですが、とにかく人の手が必要。そこで僕たちは多くの方の力を借りています。タケノコを収穫して、茹でてカットして、塩漬けにする。一時加工までを体験してもらうのですが、しっかりとお金を払います。ボランティアで長く続けるのは難しいから。中には親子で参加される方もいらっしゃいますが、お子さんにも”お小遣い”としてしっかりと給料をお支払いしています。

地域の問題は地域で解決。ノウハウを伝えビジネスを生み出すサポート

タケノコの収穫は4月中旬〜GW明け。通常収穫されるタケノコより成長したものを収穫するため、腰に負担がかかりにくい

ーー放置竹林は日本各地にありますが、他のエリアから声がかかることもあるのでは?

そうですね。でも、自分たちのビジネスとして全国各地でやっていこうとは思ってなくて。各地の皆さんで動いてもらうという考えで取り組んでいます。やっぱり、地域の問題は地域で解決してほしい。取り組むうちに、その地域も活性化すると思うんです。だから、これまでのノウハウを無料でお伝えしています。

そのうえで、完成したメンマはすべて買取を行っています。みなさん販売に苦戦するんです。だから、こちらで買い取った上で商品開発まで行っています。例えば、熊本県天草市の放置竹林問題に取り組んだときには、名産のアオサを使った「天草メンマ」を開発し、販売戦略のノウハウもお伝えしました。自分たちの商品ができるって、やっぱり嬉しいですよね。メンマの作り方だけでなく、商品開発、販売戦略までしっかりサポートすることで、地域に1つのビジネスを生み出すことができるんです。

収穫したタケノコはカット、ボイルして塩漬けして保存する一時加工までを一気に行う

ーー活動の輪は広がっていますが、課題に感じられていることはありますか。

まずは、放置されている山の所有者に僕たちの声がまだ届いていないこと。放置竹林とはいえ、土地の所有者がなければ僕たちが手を加えることはできません。所有している土地の手入れができずに困っている方もいらっしゃるのだと思うのですが、僕たちの取り組みをどう伝えていくのかは課題です。

あとは人手不足。竹林の手入れって、やっぱり人力な部分があるんですよね。少子化が進んでいる今、何か対策を考えないといけないと考えています。ビジネスとは別に、地域の活動として浸透できないかなと。自治会で行う草むしりみたいな、「春になったな、タケノコ取りに行こう」みたいな感覚で。学校行事に取り入れてもいい。楽しい恒例行事・イベントになることで続けられる形を見つけていきたいですね。

荒れた竹林を整備し、次の世代へつなげたい

竹のお箸や器を使った、流しそうめんのイベント。子どもたちに、竹林の存在を身近に感じてもらい、興味をもってもらうきっかけの場を作る

ーー今の活動を通して、次世代に伝えていきたいことを教えてください。

放置竹林問題に取り組むことで、山は確実にきれいになります。竹の寿命は8年と言われているので、今倒れている竹を一掃して、あとは1年ごとに倒れた竹を取り除きながら、生えてきたタケノコをメンマに加工していけば、10年たつと竹林は整備された状態になるんです。

次の世代には、その状態を長く維持してもらいたいんです。そうすることで、自然の大切さを感じることができるんじゃないかな。原点に戻るというか、作物を自分たちで作って食べるというかつての姿を取り戻せたら、いろんな意味で豊かになり、世の中は良くなるのかなと考えています。


各地で課題となっている放置竹林。各エリアに合わせたマニュアルを作ることで、地域の中で解決する力を付け、竹林の整備だけでなく新たなビジネス・雇用創出へとつなげることができるのが古賀さんの取り組みです。「おいしく食べて解決」。その言葉通り、厄介者だった竹林を地域の資源へと変える大きな一歩となっています。

次は、タケノコが生えるシーズンに訪問予定。収穫や加工の体験レポートをご紹介予定です。お楽しみに!

写真提供/株式会社SALUTE
取材・文/戸田千文 撮影/幸秀和

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