放置竹林から生まれるメンマ。いつもの景色を変えてくれる、収穫&加工体験へ

※ 全2話の 2話目

「おいしく食べて解決」をモットーに、福岡県糸島市で放置竹林問題に取り組む古賀貴大さんです。糸島市で複数の飲食店を経営する傍ら、放置竹林で収穫したタケノコを使って、メンマを製造。さらに、そのノウハウを各地に伝えることで、全国に広がる放置竹林問題を解決する糸口を探っています。そこで、タケノコが旬を迎えた4月の終わりに改めて古賀さんを訪問。タケノコの収穫や加工の様子を体験&見学してきました。

古賀さんの取り組みはこちら:おいしく食べて解決!放置竹林から生まれたメンマで、竹林を地域の資源へ


女性や子どもでも簡単!竹林でタケノコの収穫を体験

古賀さんの案内でやってきたのは、特別な山奥というわけではなく、ごく普通の道路のそばにある竹林です。茂った竹林へと向かうため、慎重に勾配を登るとガラリと世界が変わりました。

高く茂る竹で、やや薄暗さがありますが、ひんやりとした空気と青く爽やかな竹の香りに包まれ、思わず深呼吸!軽やかな鳴き声で野鳥の存在を感じながら、少しずつ竹林の奥へと進んでいきます。草や枯れ枝が重なった地面は、長靴のソール越しでも感じることができる柔らかさ。普段、コンクリートを踏み慣れた足元から、じわじわと心までほぐれて行くよう。うっそうと不気味なイメージがありましたが、すでに整備が進んだ竹林は不思議な心地良さを感じます。

福岡県糸島市で放置竹林問題に取り組む古賀貴大さん

そんな竹林で立ち止まって周囲を見ると、あちこちにあるのが1〜3mほどに伸びたタケノコの姿。

「普通は土の中にあるか、地面から十数センチくらいの高さのときに掘って収穫するタケノコですが、メンマに加工するタケノコは2〜3mほどに成長したものを使っています。土に隠れているタケノコを探す必要もなく、しゃがんだり、土を掘ったりする必要もなく、腕力のないご年配の方や女性、子どもでもできるのが魅力なんです」

そう言いながら、目の前にあった背の高いタケノコに糸ノコの刃を当てる古賀さん。ものの30秒ほどであっという間に収穫してしまいました。とはいえ、古賀さんはこれまでに何百本、何千本と収穫してきたプロ。厚い皮に包まれたタケノコがそんな簡単にカットできるものなのかと、半信半疑で挑戦してみました。

硬さはあるものの、ザクザクと刃が入って行く感覚は、なんだかフランスパンを切る感触に似ているかも

慣れない糸ノコにドキドキしながら、タケノコに刃を当て引いて見ると、硬いと思っていた皮の部分にザクッと入り込みます。踏ん張るほどの力を入れず、むしろ軽いと感じるくらい!1分もかからないうちに切り終えました。

切り口からはじわじわと樹液があふれ、いっそう濃い竹の香りが。
その瑞々しさと香りに誘われるかのように、切り口には先ほどまでいなかった虫たちが姿を見せ、自然の中にある循環を感じました

収穫したタケノコはその日に塩漬け。「地域の役に立っている」という実感

老若男女40名ほどで作業を進める作業場には、ほんのりとタケノコの香りが漂っています

竹林を後にして、次に向かったのはタケノコの加工場です。タケノコは時間が経つとえぐみが出てしまうため、収穫されたその日のうちに茹でて塩漬けし、長期保存が可能な状態に。

切り分けたタケノコは穂先と中間、そして根元に近い部分と
3つに仕分けして茹でられる

タケノコは、1本ずつ皮をはぎ、切り分けられていきます。作業をするのは、古賀さんが経営する食品加工会社や飲食店で働く社員だけでなく、短期で働くアルバイトや学生、ノウハウを学ぼうと他の地域から来た方や普段は他に仕事があるフリーランスの方までさまざま。時には、親子で手伝いにくる方もいるのだとか。

3年前に神奈川県から移住してきた山内朋美さん

――タケノコの加工を手伝うのは今年で3年目という山内朋美さんに、話を伺いました。

山内さん:

糸島に移住してきたころに、求人サイトで見つけたのがタケノコの加工のお仕事でした。SDGsというものにも興味があったし、地元や農家さんのお手伝いでお役に立てる短期の仕事ってなかなかなかったので、チャレンジすることにしたんです。

いろんな方たちと交流を持ちながら仕事ができるのはすごく刺激的。シーズンが終わって仕事から離れると、ちょっと恋しくなっちゃって(笑)。春が近づくと「そろそろタケノコの季節だな」って、ワクワクします。

「古賀さんが用意してくれるまかないが絶品!」と山内さん。
すべての料理にメンマが使われていて、みんなでワイワイ食べる時間が
楽しみなのだとか
タケノコの加工場で振舞われるまかない料理。今回はメンマ入りの麻婆豆腐

今は「無垢-muku-cafe」で働いているのですが、タケノコのシーズンだけシフトを調整して、古賀さんのお手伝いをしているんです。古賀さんとの縁もあって、カフェではメンマを使ったパスタを提供しています。シャキシャキとした歯応えがあって、これまで食べていたメンマとは全然違う。自分がメンマの製造に携わっている分、さらに自信を持ってお客さまに提供できています。

古賀さんのメンマを使用した無垢のパスタメニュー

――実際に、メンマ製造のお仕事に関わることで、山内さんの意識や心の変化を感じることはありますか。

山内さん:

地域の課題解決のために、自分が役に立てていることを実感できることって、普段の生活ではなかなかないじゃないですか。でも、ここでお手伝いをしてちょっと携わるだけでも、「片棒を担いだぜ」みたいな気持ちになれる。それはすごく嬉しいですね。

――いつも見る景色も変わってきそうですね。

山内さん:

そうですね。糸島で車を運転していても、竹林が気になっちゃう。「この竹林は手入れがされていないな」とか、「なんかいい山があるな」とか。自分が関わることで、普段の景色でも見る目が変わってくる。そんなきっかけになるって、すごくいい経験じゃないかなって思うんです。

ただの作業ではなく、地域や人とのつながりを感じてもらいたい

集まったスタッフたちとは、仕事終わりに記念撮影!新しいコミュニティやつながりが生まれるきっかけにもなっている

「地域の課題解決のために、自分が役に立っていることが実感できる」。そう話してくれた山内さん。実は古賀さんは、一緒に働く人それぞれにその思いを感じてほしいと考えています。

古賀さん:

ただ働く・作業をするということではなく、自分たちがやったことが、どんなふうに地域につながっているのかを感じてもらいたい。僕はそんな思いもあって、取り組みの意図や何がどのくらい改善されたのかという成果を働いてくれた皆さんにお伝えするようにしているんです。

――成果が見えると、やる気にも繋がりますよね。

古賀さん:

そうですね。放置竹林問題とは別に、せっかくここで集まって一緒に仕事をするんだから「友達を作ってくださいね」ってお伝えしています。本当に色んな人がいるので、それぞれに交流をしてほしいです。紹介し合うことで、別の仕事につながることもある。シーズンを終えたら、働いてくれた皆さんやご家族も呼んで、打ち上げもしています。お祭りみたいな感覚です。

――仕事以上の価値として、「人とのつながり」を感じて参加されている方も多そうですね。

タケノコシーズンが終わったあとに開催される、おつかれさま会の様子。メンマを使った料理が並び、家族そろって楽しむ姿も

地域の“行事”として、美しい竹林を維持していきたい

加工場に運ばれてきたばかりのタケノコ。
朝から夕方まで、糸島市内の竹林から何度もタケノコが運ばれてくる

――シーズンになるとタケノコがどんどん加工場に運ばれてきますが、これはすべて糸島で収穫されたものなのですか。

古賀さん:

今ご案内している加工場にあるのは、糸島産です。他のエリアで収穫したタケノコを買い取りして、加工している現場もあります。僕たちは、地域ごとに放置竹林問題に取り組めるように、メンマの製造や販売ノウハウは無料でお伝えしていますが、すぐに取り組むのが難しいエリアもあります。また、糸島にも竹林はたくさんあって、僕たちだけでは人手が足りずにすべてをカバーすることもできません。そこで、皆さんが収穫したタケノコを買い取って、加工を僕たちで行うこともしているんです。

塩漬けされたタケノコは、早くもメンマに近い形状に。この状態で1年以上の保存が可能になる

――先ほど案内いただいた竹林だけでも、見る限り相当の数のタケノコがありましたが、全て収穫してしまうのですか。

古賀さん:

タケノコは根こそぎ取るのではなく、毎年、数本は残しておくんです。残した1本から来年はまた十数本のタケノコが生まれるので、間引きながら竹林を整備していきます。

残した竹は寿命を迎えると枯れて倒れてしまうのですが、チップにして肥料にすれば、土に帰すことも可能です。また、竹を使った舗装材料開発も計画しています。竹チップを含む舗装材は、柔らかで足への負担が少ないだけでなく、ひび割れ防止やヒートアイランド現象の抑制効果といったこれまでにない付加価値を持っているんです。このように竹を軸にした事業を複数展開し、メンマづくり以外にも通年で仕事がある状態を作れば、雇用にもつながって、地域ビジネスが発展する。本当の意味で地域の活性化につながると考えています。

古賀さんたちは現在、40カ所ほどの竹林の整備を行なっているものの、まだまだ手付かずの竹林は糸島市内でも多くある

――糸島だけでも、まだまだ整備が行き届かない竹林は多くあると思います。古賀さんたちはタケノコの買取をしたり、ノウハウを無償で伝えたりと、さまざまな取り組みで活動を広げていますが、今後の活動で必要なものは何だと考えているのでしょう。

古賀さん:

やはり人手です。放置された竹林は、糸島だけでもかなりの面積があるので、僕たちだけでやるというのは難しい。地区ごとに、住民の方が取り組むぐらいのことをしなければ網羅できないんです。

理想は、学校や地域の行事になること。自治会の清掃活動と同じで、この時期になったら竹林にみんなで入って収穫し、整備につなげてほしいです。お小遣い稼ぎでいいから高校生や学生たちが、学校帰りに数本だけタケノコを収穫して、僕たちが買い取ったお金で買い食いしたり、ほしいものを買ったりして。それくらい当たり前のことになってくれたら、すごくいいなって思うんです。こうやって、きれいな竹林を保全して維持して行く方向へ、10年後、20年後にはなっていたらうれしいですね。


数時間の収穫・加工体験。でも帰り道、車の窓から見える景色はなんだかいつもと違っていました。これまで意識したこともなかった生い茂る竹林や新緑が美しい山々が鮮明に見えるようになったのは、体験したからこそでしょう。「地域課題の解決」と聞くと、ちょっと大袈裟に聞こえるけれど、古賀さんの取り組みは、働くこと・食べることという人の営みを繰り返すこと。「なんだ、難しくなんてない。実は暮らしと地続きで、私にできることはきっとある」と気付かせてくれる貴重な時間でした。

写真提供/株式会社SALUTE・無垢-muku-cafe
取材・文/戸田千文 撮影/幸秀和

おいしく食べて解決!放置竹林から生まれたメンマで、竹林を地域の資源へ

みんなの感想

  • 南笑子さん

    メンマは中国産がすべてだと…

    メンマ…中国産がすべてだと思ってました…放置竹林?知りませんでした

    • 三ツ矢青空たすきスタッフ

      糸島のメンマについての取り組みを知っていただけて嬉しいです! より美味しいもの、より良い結果を求めて工夫する… 日本ならではの文化の一面が現れているお話と思います。

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