森
皮剥き間伐で森を再生。「NPO法人いとなみ」が次世代へつなぐもの #1
※ 全2話の 1話目
ひんやり心地よい空気に、木々のざわめき、鳥のさえずりや虫の鳴き声。一歩、森に入るとまるで世界ががらりと変わったかのような、心地よい空間が広がります。そんな糸島の森の姿を守り、次の世代へ繋げようと取り組むのが、NPO法人いとなみの藤井芳広さん。子どもたちでもできる「皮剥き間伐(かわむきかんばつ)」のワークショップを通して、森の現状や抱える課題を伝えています。100年先の世代にすこやかな森林を引き継ぐために、私たちに何ができるのかを藤井さんに伺いました。
釜山から見れば、海の向こうは糸島
「森が元気じゃなければ、里や海も元気じゃない。糸島は、山と海が近いから、僕たちの取り組みの効果も実感しやすい場所なんです」。
そう話してくれたのは、NPO法人いとなみの藤井芳広さん。日に焼けた姿に、ハキハキと話す姿に快活さを感じます。そんな藤井さんが、今、糸島を中心に広げているのが「皮剥き間伐」といわれる手法。かつて木材生産のために人工的に植林されたものの、手入れがされずに放置されている杉やヒノキの間伐を行うことで、森の環境をととのえる取り組みを行っています。
藤井さんが糸島に移住してきたのは、およそ11年前のこと。それまでは東京で環境運動やスロービジネスに取り組むNGOに所属し、独学で林業を学んでいました。「同時に、日韓交流の取り組みもしていて。2009年に韓国を歩いて一周したのですが、日本で知られていない面白い取り組みがたくさんあったんです。日本で読まれている環境や農業に関する書籍は、韓国でたくさん翻訳されている。でも韓国で出版された本って、日本ではほとんど翻訳されていないんです。これって僕らの意識の低さもあるんじゃないか。韓国の面白いものを、日本でももっと知ってもらいたいと思いました」。
帰国後、韓国へのアクセスの良さを考えて、福岡県内で移住先を探していたところ、出会ったのが糸島。お天気が良かったその日、糸島で見た海の向こうに見えたのが対馬でした。「韓国にいたとき、釜山からも対馬が見えたんです。あのとき韓国から見た海の向こうはここなんだ。釜山と糸島は真っ直ぐ繋がっているんだと運命的なものを感じて、糸島に住むことを決めたんです」。
ほかと比べることもなく即決したという藤井さんですが、糸島との相性は良かったようです。
「糸島は2000年前に、大陸から渡来して来た人によって栄えたという説があります。今も移住者が多くて、この土地には人を呼び寄せるエネルギーがあるんじゃないかな。この地のために何かしようって人が多く住んでいる。人との縁や自然との関係を大切にして、それらの恵みを循環させていくような、心豊かな人が多い気がするんです」と声を弾ませます。
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