第5回:我が家はストーブで塩作り!海水から塩を作ってみよう。

こんにちは。糸島で「食べもの・お金・エネルギー」をつくる“いとしまシェアハウス”を運営する畠山千春です。

我が家の冬の手仕事といえば、塩作り。三ツ矢青空たすきでも、ノドカフェの坂本強美さんが海底湧水から塩を作る体験プログラムを提供されていましたね。海がすぐそばにある糸島だからこそ挑戦できる、海水からつくる塩作り!自然の恵みを感じられるおいしい塩がおうちで簡単に作れると思うとワクワクしますよね。

冬は1年を通じて最も海が綺麗な季節といわれています。今日は特に澄んでるなあ!と感じるタイミングを狙って海水を汲みに行きます。糸島の海はとても美しく、その透明感は海面に落ちた木の葉の影が海底に映るほど。山が近く、海底から水が湧くこの海は栄養が多く、塩作りにもってこいなのです。

そして、我が家は暖房として使っている薪ストーブの副産物で塩が作れるので、塩作りはもっぱら冬。もちろん、石油ストーブでも塩作りはできますよ!コトコトゆっくり水分を蒸発させながら、固まっていく塩の結晶を見つめるのはとても楽しいひととき。浮かび上がってくる塩の結晶がアートのようで美しく、また理科の実験のようでワクワクします。おうちで塩づくり、ぜひ楽しんでみてくださいね。

約96%の水分を蒸発させる!

塩作りって海水の水分を蒸発させればいいだけでしょ? と思うかもしれませんが、海水に含まれる塩分はたったの3.1%~3.8%程度。さらに、山の湧水が多く流れ込んでいる糸島の海はさらに塩分濃度が下がるので、もう少し低いかもしれません。

残りの約96%もの水分を蒸発させなければならないので、大量の海水から塩を作ろうとするともう大変!庭のカマドで数時間ぐらぐら海水を焚いたのですが、みるみるうちに薪が吸い込まれていって驚きました。膨大なエネルギーと時間を使って作る塩は、昔は大変貴重なものだったに違いないと感じます。

体の中に「海」を持つことで生き延びてきた命

地球上で初めて生命が誕生した「海」。様々な動物が海から陸へと上がってこれたのは、体内に「海」と同じ環境を持つことができるようになったためといわれています。たとえば赤ちゃんが育つ羊水や人間の血液は、太古の海水とミネラルバランスがよく似ているのだそう。この“海”のミネラルバランスを保った「塩」は、身体に必要なミネラルを摂取するのに適しているとされています。

一方、スーパーなどに並ぶ食塩の多くは海水を電気分解して作られる「精製塩」です。これは塩化ナトリウムだけを抽出するため、塩化ナトリウム99%以上とかなり純度の高い精製物です。雑味がないのが特徴で、口に含むと少し塩辛く感じられます。

そもそも海水に含まれる塩化ナトリウムの量は78%程度で、そのほかにさまざまなミネラルが20%以上含まれています。海水から手作りする塩はその成分を残しつつ、天日で自然乾燥させたり釜で煮詰めたりする昔ながらの方法で作られています。そのため、塩みの中にも甘味やうま味など複雑な風味が混在しているものが多いとされています。

精製塩以外の塩には明確な定義があるわけではないので、どんなミネラルが含まれているかは海水の取れた場所や製造方法次第ともいえます。ミネラルをバランスよく摂りたいと考えている方は、成分表示を確認してみてください。

塩を作ってみよう!

まずは、塩の原料である海水を採取しましょう。ポイントは、水がきれいな場所で採取すること。雨の日や直後は避け、波が穏やかな日を狙うと濁りが少ない海水が手に入ります。     

(1)海水を煮る

汲んできた海水をこして不純物を取り除き、鍋に入れて海水が1/10程度の量になるまで煮詰める(煮詰め過ぎに注意!)我が家では暖房として使っている薪ストーブに乗せて数日かけて水分を飛ばしていくのですが時間がかかるので、手早く塩作りをしたい人はガスコンロを使うのをオススメします。

(2)硫酸カルシウムを取り除く

濃縮された海水は白く濁りはじめ、塩ではなく「硫酸カルシウム」が先に結晶化してきます。えぐみのもとになるため、濡らしたサラシをざるにのせ、その上から海水を注いでこすことで取り除きます。
※サラシがご自宅にない方は、キッチンペーパーなどで代用もできます。

鍋の底にうっすら白い粉が見えてきたら、それが硫酸カルシウム。タイミングが遅れると塩も一緒に結晶化してしまうので、煮詰めすぎずにこしましょう。鍋底にも硫酸カルシウムがへばりつくことがあるので、こすときに鍋も洗いましょう。

(3)さらに煮詰める

こした海水を鍋に入れ、できる限りの弱火で煮詰めます。ここが最大のポイントなので、鍋から目を離さないようにしましょう。

沸騰させないくらいの弱火で、じりじりと水分を飛ばしていきます。結晶の大きな塩を作るためには、超弱火が大前提。薪ストーブや灯油ストーブの上に乗せれば、ゆっくり水分が蒸発して様々な形の結晶が楽しめます。ピラミッド型、フレーク型、サイコロ型、どんな結晶ができるか観察してみてください。

大きな結晶にこだわらなければ、中火で水分を飛ばしてしまってもOK!

(4)塩をすくう

結晶化した塩をフォークやあみじゃくしなどですくい、洗ってよく絞ったサラシの上に乗せる。結晶は崩れやすいので丁寧に。

(5)水分がなくなる前に、こして水分(にがり)と塩を分離させる。(煮込みすぎに注意!)

にがりと塩を分離させるため、水分がなくなる前にこしてください。水分を全部煮てしまうとにがりの入った苦みの強い塩になってしまいます。また、この塩は水分が多く乾きにくいため、(4)ですくった塩とは別でこしておくと良いです。この塩には多少のにがり成分も含まれているため、(4)の塩とは少しだけ風味が違うはず。食べ比べてもいいかもしれません。

(6)陽にあてて乾燥させる

作った塩は天日干しで乾燥させます。数日経っても乾燥しない場合は、フライパンで炒って焼塩にしても良いと思います。水分がなくなったら完成です!にがり成分の入った塩は湿気を帯びやすいので、十分乾燥させてください。

<にがりの活用法>

塩化マグネシウムを主成分とする天然にがりはミネラルたっぷり。本来はお豆腐作りの凝固剤として使用できますが、今回はできる限り塩にしたので取れた量は少しだけ。お豆腐作りには足りないので、少量でもできる活用法を紹介します。

・にがりうがい:100ccの水に対してにがりを数滴入れてうがいをする。のどの不快感解消に。
・にがりのお風呂:浴槽にこさじ1杯のにがりを入れる。湯冷めしにくくなります。
・にがりの歯磨き:歯ブラシに数滴にがりをのせて、歯茎をマッサージする。

※高血圧の方や減塩が必要な方はお医者さんとご相談の上でお試しください。
※大量に飲んだり食べたりすると体に負担がかかるのでおやめください。

山と海はつながっている!

深江海岸

私が初めてふもとの海で塩づくりをしたとき「山と海はつながっているんだなあ」という当たり前のことに気がつきました。美味しい塩を作るために綺麗な水は欠かせません。山に住むものとして、水を綺麗なまま海に届けなければいけないな、という想いがより強くなりました。

頭では理解していたけれど、それが自分の舌や体の感覚を通じて全部繋がり、やっとピンときたのです。そしてますます、糸島の海が好きになりました。海が近くにある方、ぜひお近くの海水でも作ってみてはいかがでしょうか。今までと違う感覚で、海を見れるかもしれません。

糸島で塩作り&味噌造りワークショップ!

いとしまシェアハウスでは、3/15-16に、糸島の海水からつくる塩作り&味噌作りワークショップを開催します!初日は糸島の澄んだ海水を汲みに行き、かまどで炊いて自然の塩を作ります。お昼は羽釜で炊いた棚田米の塩おむすび!2日目は自然栽培米の手作り麹を使用した味噌作りのワークショップ。お気軽にご参加ください。

http://itsmsh.com/event/2025/01/31/shiomiso/


語り部一覧

いとしまシェアハウス /
畠山千春さん・志田 浩一さん
いとしまシェアハウスは、「食べ物・お金・エネルギーを自分たちでつくる」をコンセプトにした、自然とつながるシェアハウスです。棚田に囲まれた集落の中で、田んぼや畑・猟を行い、築80年の古民家を改修しながら、様々な個性を持つ男女が共に暮らしています。
ここでは、体験したこと、つくり出したものをたくさんの人たちと“シェア”する暮らしの実験を行っています。

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