毎日の食事をもっと楽しく、幸せに。「卯農園」が考える“おいしい食卓” #2

※ 全2話の 2話目

食事が幸せなら、人生が変わる

収穫を間近に控えたナス。常に10種類はお客さまに届けられるように、年間50〜70種の野菜を育てる

卯農園が目指していることのひとつが、「おいしい食卓」を届けることです。

「私、子どものころは野菜もお肉もきらいだったんです。でも、出されたものを全部食べ終わるまで席を立たせてくれなくて。つばが飛ぶから食事中の会話もだめ。食事の時間が楽しくなかったんです。だから子どもたちには、もっと食事を楽しんでほしい。食卓を囲んで、これはあの人が作った野菜だねって会話をしながら、おなかも心も満たしてほしい。食事って、1日3回ある。1回1回を幸せな時間にできたら、それだけで人生が変わると思うから」。

誰かと過ごす食の時間を大切にしたいと考える麻里子さん。お客さんとは、ただ野菜を作る農家だけでなく、家族のようなつながりでありたいと考えています。そこで新たに、スタートするのが、食の楽しみを伝える取り組み。卯農園のファンや近隣の方が集まって、料理やイベントを楽しむことができる場づくりです。

「いままで卯農園を利用してくれていたお客さんを招いて、ワークショップをしたいんです。親子でできる梅干し作りや味噌作り。お取引がある飲食店のシェフを呼んで、野菜を使った料理の試食会。農業自身のおもしろさや楽しさ、魅力を一緒に感じられたらうれしいですね」。

計画を話す麻里子さんの声ははずみます。

「社会に疲れて、農業を始めようと思った。何も知識がなかったから、当時、自然農業で有名だった方に師事を仰ぐために糸島に移住したんです」と章さん

さらに章さんは、最近、facebookで卯農園のグループを作ったことを教えてくれました。「もっとマニアックな農業機械とか、堆肥とか、栽培方法について伝えていきたいと思って」と話します。

一方、麻里子さんもグループの誕生をきっかけに、お客さん同士の新たな広がりができることに期待を寄せています。「野菜を買ってくださっている方たちの間でも、コミュニティができたらいいなって。やっぱり栽培方法の細かい話より、食べ方の方が気になるじゃないですか(笑)。買ってくださっている方同士でレシピを教えあったり、食べることについて話しをしたりする場になればいいなって農業以外のことでも、得意分野を持つ方はいっぱいいるから。広がりを持って新しいことにチャレンジできたら」

食事を楽しめるスペースとキッチンが整った「うさぎのいえ」

そんなふたりの夢を叶える新たな舞台が、2023年2月に誕生しました。それが「うさぎのいえ」。キッチンを備えたレンタル&イベントスペースです。ここでは収穫や料理づくり体験などイベントを開催。「皆さんと一緒に幸せな食卓を体験できるような施設になれば」と麻里子さん。食卓から広がる繋がりに、ワクワクがとまりません。

今日からできる、“おいしい食卓”のヒント

収穫したばかりの野菜はすぐに倉庫へ。その日のうちに、お客さんに発送する

普段の食事をより楽しく、おいしく、幸せなひとときに。“おいしい食卓”につながるためにどうすればいいかを、農家の目線で教えてもらいました。

「なるべく近くで穫れたものを食べて欲しいですね。外国産より、国産、地元のお野菜。近くの農家さんから直接買うのが理想だけど、難しい人もいると思います。だったら、ぜひ直売所を利用してほしいです。野菜って、やっぱり鮮度が一番。有機農業、慣行農業にかかわらず、新鮮な野菜はおいしいんです。生でそのままとか、グリルして調味料は塩だけで食べても十分楽しめる。凝った料理じゃなくていいから、その分、食卓で会話を楽しみながら食べてほしいです」

私たちが生きる上で、欠かせない「食」。凝ったものを作らなくても、ちょっとした工夫で豊かな食卓を楽しむことができます。野菜を選ぶときに、生産者の顔が見えるものを選ぶ。たったそれだけのことで、より心豊かなひとときが過ごせるようになるかもしれませんね。

語り部一覧

卯農園 /
三角章さん、麻里子さん
三角章(みすみ・あきら)さん
大阪府出身。会社員を経た後、日本一周の旅へ。
自然農業を学ぶために、糸島に移住し、
麻里子さんと結婚後は、ともに「卯農園」を営む。

麻里子(まりこ)さん
福岡県北九州市出身。
大学時代に授業で有機農業を学んだことを機に、農業の世界へ。
2011年に弟とともに、株式会社卯(うさぎ)を設立し、「卯農園」をスタートした。

体験一覧

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