自然によりそう暮らし
アロマの工房から広がった支援の輪。店主・阪井さんが作る力強い女性コミュニティ #1
※ 全2話の 1話目
糸島市にある「アロマの工房 香の宮」。精油を使ったコスメ作りや天然植物を使った線香作りを体験できます。そんな香の宮そばにあるのが、ひとつのトレーラーハウス。ここでは毎週土曜に、子どもへの食事の提供と塾、農園がひとつにまとまった「子どもの居場所 寺子屋しましま」が開催されています。香の宮を経営する阪井麻紀さんが中心となり、地元の主婦や学生らで運営しています。目指すのは、いざというとき一緒に動けるチーム。長年の災害被災地支援をきっかけに、さまざまな事業や活動を展開する阪井さんに話を伺いました。

妊活がきっかけで、アロマの世界へ

辺りはのどかな田園風景。糸島富士と呼ばれる可也山が一望できます。そんな好ロケーションに思わず見惚れていると、気さくに手を振って声をかけてくれたのが、阪井麻紀さんです。天然素材とアロマ精油を使ったコスメづくりなど、香りを軸にさまざまな体験ができるサロン「アロマの工房 香の宮」を運営しています。
糸島市出身の阪井さんが、アロマに興味を持ったのは30歳を過ぎたころ。「結婚して数年経っても、子どもを授かることができずにいました。そのころアロマが妊活にいいと、ウワサを聞いて勉強を始めたのがきっかけです」。専門の学校にも通い、アロマセラピストになろうとサロンを開業したところ、念願の妊娠が発覚!サロンは開店休業となりました。

「でも産婦人科で知り合ったママ友達から、アロマを使って虫除けスプレーができないか相談を受けたんです。子どもには、殺虫成分が入ったものは使いたくないからって」。
そこで、自宅や公民館などで、ワークショップをはじめた阪井さん。ワークショップの様子はクチコミで広がり、2011年に「アロマの工房 香の宮」をオープンしました。
香りの元をブレンドして作るお香・線香

そんな香の宮でできる体験のもうひとつが、「お香・線香づくり」です。
「市販のお香・線香には、化学香料が使われていることが多いんです。人によっては咳や鼻水の原因になってしまいます。お寺の方や家庭にお仏壇がある方など線香を毎日使う方にとっては悩ましい問題です。そこで、天然香料だけのお香・線香を作ってみようと思ったんです」。
材料となるのは、植物の葉や茎、あるいは幹、根などで、化学香料は一切使わずに、自然由来の香り成分だけで作っていきます。

さらに阪井さんは、香の宮オリジナル線香「卑弥香」を開発。線香と書かれているものの、お仏壇に供えるだけでなく、本当に香りが良いのでご自宅で香りを楽しむお香として気軽に使っている方も多いとか。
「でも今度は『線香が倒れたら火事になる、危ない』って言われてしまい(苦笑)。じゃあ、と地元のヒノキで木香炉を作りました」。ケースの中に火をつけた線香を寝かせたまま使うことができる木香炉。ふんわりと香りが漂います。
さまざまなデザインが並ぶ木香炉。今回は特別に、「三ツ矢青空たすき」オリジナルデザインを製作してもらいました。
木香炉の材料には、福岡と佐賀にまたがる脊振山系の間伐材を使用しています。

間伐材を選んだのは、水害にあった被災地に行ったときに見た、ある光景がきっかけでした。
「近年多発しているのが水害。メディアを通して被災地で線路や住宅を押し流す濁流や土砂を見たことがある人もいるのではないでしょうか。濁流や土砂の中には、実は多くの木が混ざっています。これは、山の保水力がなくなっているために起こる現象。海外の材木が安いからと、国産材から人々が離れ、杉やヒノキといった人工林が手入れされなくなったことがひとつの要因です」。

山を守るためには、人工林を間伐して管理する必要がある。でも、切り出して加工する手間やコストで割高になってしまい、売れない。そんなジレンマがありました。
「それなら、糸島で間伐材を使った商品を作ろうと思ったんです。もしこれがヒットしたら、日本の間伐材をたくさん使えるようになる。それによって災害を減らすことが、最終的な目標なんです」。
「ちょっと壮大でしょ、欲張りなので」と、からりと笑う阪井さん。その様子にこちらもつられて思わず声を出して笑いながら、なんだか目に見えない力をもらった気持ちになりました。
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