海底湧水から山と海の循環を知る、「ノドカフェ」坂本さんの試み #1

※ 全2話の 1話目

糸島市の中心地にある前原商店街に、2017年にオープンした「ノドカフェ」。教育関係の講演活動を行う夫・敏幸さんと、足の裏を刺激することで体の不調を改善するリフレクソロジーを生業とする妻・強美さん夫婦によって運営されています。

店内は、リフレクソロジーが受けられるスペースと、本を読みながらドリンクや軽食がいただけるカフェスペースを併設。また、社会課題を考える講演会やワークショップを開催し、多様な人の繋がりを生み出しています。強美さんに話をうかがうと、そのユニークなあり方が見えてきました。

夫婦のやりたいことを詰め込んだらこうなった

昭和な色香が残る福岡県糸島市・前原商店街の一角に、「ノドカフェ」はあります。店内に足を踏み入れると、目の前には1台のベッド。部屋の奥にふと目をやると、壁一面に備え付けられた棚に溢れんばかりの本が並び、手前には小さなカウンターも。「ここは何屋さん?」と、誰もが疑問に思ってしまうこの場所こそ、坂本さん夫婦の夢と理想が凝縮した空間なのです。

ノドカフェのオーナー・坂本強美さん

遡ること6年。まだノドカフェが影も形もなかったころ、強美さんは福岡市でリフレクソロジストとして働いていました。妊娠を機に移住したのが糸島市。新生活にあたって、コレクターのようにたくさんの本を収集していた夫が、本を読んでもらえる空間を作りたいと強美さんに提案したのが始まりです。

「とにかくそのころは施術をするのが楽しくて、私としては“これが続けられるならいいよ”ぐらいの感じでした。2人のやりたいことをひとつの空間に集約したら、リフレクソロジーが受けられてコーヒーを片手に本も読める、ノドカフェが誕生したんです」。

コミュニティを生み出す“ユナイテッドカフェ”

ノドカフェのコンセプトは、“ユナイテッドカフェ”。その意味は?
「ユナイテッドとは、人と人を結びつけること。訪れた人にリラックスしていただくことはもちろん、定期的に社会問題の解決をテーマにした講演会を開催したり、映画の上映会などを行い感想を述べ合ったりしています。ただ単に話を聞いて終わり、映画を見て終わり、というだけではない時間を提供、共有し合う場として活用しているのです」。

ノドカフェの店内の様子。おしゃれな自宅の一室のようで、カフェには見えません

このような活動を続けるためには、自分たちが学びに行くことも怠ってはいけません。そして、ある講演会に参加した時に知ったのが、いま熱心に取り組んでいる「海底湧水から塩を作る」取り組みでした。

「夫に誘われて『海藻研究所』所長の新井章吾さんの講演会に行ったことがきっかけでした。新井さんは、雨が山や土に染み込むことによって、時間をかけて海底から出てくる“海底湧水”で塩をつくっており、そのエピソードがとても興味深かったんです。なんでも海底湧水は、森のミネラルと酸素を豊富に含む、真水と地下海水が混じり合った湧水というだけではなく、精製塩にはない成分が豊富に含まれて、質のいい塩が作れるというわけなんです」。

それからは、海に通って塩づくりを繰り返す日々が始まりました。新月や満月など、月の満ち欠けによってプランクトンが移動し、塩の味にも影響する。とても奥深い世界に、のめり込んでいきました。

プラスチックのプランターに小さな穴を開け、短いホースを差し込む。そのホースにビニール袋をかけたら、海底湧水を汲み取るための装置が完成。これを海の浅場に沈めておくことで、海水よりも軽い湧水がビニール袋の中に溜まっていくという仕組み。

海底湧水から山と海の循環を知る、「ノドカフェ」坂本さんの試み #2

語り部一覧

ノドカフェ /
坂本強美さん
足の裏への強い興味からリフレクソロジストの道へ。2015年に結婚を機に糸島に移住。2017年に夫の敏幸さんと「ノドカフェ」をオープン。店名の由来は、娘の名前(のどかちゃん)から。現在はカフェでリフレクソロジーを施しながら、海底湧水などの活動を行っている。

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