第10回:台所から気候変動を考える?

こんにちは。糸島で「食べもの・お金・エネルギー」をつくる“いとしまシェアハウス”の畠山千春です。稲の色が鮮やかな緑になり、風がふくと稲がざあっと揺れて、棚田散歩も楽しい季節になってきました。

しかし……暑い!「夏ってこんなに暑かったっけ?」と思ってしまうほど、日差しの強さが年々増している気がします。そんななか、SNSでは「田んぼの水温が上がりすぎてザリガニが茹で上がっている」という“茹でザリガニ現象”が話題になりました。投稿を見てみると、赤く茹であがったザリガニたちが田んぼにごろごろ…。水から逃げようと、稲にしがみついている姿まで。見るだけで「これ、大丈夫なの!?」と心配になるほどでした。

それもそのはず。気象庁のデータによると、2024年は統計開始以来126年間で“もっとも暑い年”。しかも、2023年から「観測史上最高」を毎年更新しているのが現状なのです。
6月のうちから真夏のような暑さがやってきて、もはや「夏が1か月前倒しで来てしまった」ような感覚。しかも、今年は例年よりも20日以上早い“梅雨明け”で、過去最速ともいわれています。なんだか気候がおかしくなってるな?と肌で感じる日々です。

温泉のような田んぼ!?現場に行ってみた

では、福岡・糸島にある我が家の田んぼはどうなっているのでしょうか。

田植えの準備をしていたある日、実際に田んぼの水温を測ってみようと出かけました。照りつける日差しは、帽子がなければ頭が痛くなるほど。道路のコンクリートには熱がこもり、裸足で歩くのも危険なくらい熱々。そしていざ、田んぼの中に足を入れてみると「熱い!!!」田んぼの水が温泉のように熱くなっていたのです。

川から直接水を引いている田んぼの水の取り込み口は冷たくて気持ちがいいものの、田んぼを2枚目、3枚目と水が流れていくうちに太陽光に温められて熱湯のようになってしまいます。どうどうと注ぎ込む一見冷たそうな水が熱湯だったときの絶望と言ったら!言葉にできません。

足元は温泉、空からはギラギラの太陽光線。そんな中での農作業はあまりに過酷で、「とてもじゃないけど続けられない」と、途中で作業を中断した日もありました。

命の危機にさらされる、田んぼの生きものたち

田んぼのカブトエビ。

農薬や化学肥料を使わない我が家の田んぼには、カエル、アカハライモリ、オケラ、ジャンボタニシ、カブトエビ……いろんな生きものが暮らしています。でもこの暑さの中で、彼らも命の危機にさらされています。

水温が30℃を超えると、水中の酸素が減って生きものの活動が低下し、40℃を超えると呼吸困難や熱死が起こるともいわれています。特に、エラ呼吸をするオタマジャクシにとっては、酸素不足が命取り。実際に我が家の田んぼでも、暑さで茹で上がったオタマジャクシが田んぼにぷかりと浮かんでいました。

彼らがいなくなってしまうと、田んぼの生態系のバランスが崩れるだけでなく、お米づくりにも深刻な影響が出てきます。

たとえばカエルは、稲を食べてしまうウンカなどの害虫を食べてくれる小さなハンター。彼らが働いてくれるからこそ、殺虫剤などを使わずにお米づくりができるのです。

また、田んぼの底ではジャンボタニシやカブトエビが大活躍。一般的には害虫とみなされるジャンボタニシですが、農薬を使わないお米づくりでは発芽したばかりの雑草を食べてくれるありがたい存在なのです。また、カブトエビは泥を巻き上げて日光を遮り、雑草の発芽を抑えてくれます。農家にとっては手間のかかる除草作業を、生きものたちが自然のサイクルの中で担ってくれる。そんな姿を見ていると、「田んぼはひとつの生態系なんだな」と強く実感します。生きものと人間が支え合う、小さな宇宙のようです。

もちろん、稲そのものにも深刻な影響があります。田んぼの水温が35℃を超えると、稲の根は高温ストレスにさらされ、根の呼吸機能が低下し、十分に酸素や養分を吸えなくなってしまいます。すると地上部の茎や葉にも栄養が行き届かず、生育が鈍くなってしまいます。

特に出穂期〜登熟期(お米の実が太る時期)にこのような水温が続くと、籾がうまく実らなかったり、白く濁った「白未熟粒」が増えたりして、最終的な収量や品質にまで影響が出ます。おいしいお米ができるかどうかは、この時期の水温に大きく左右されるのです。

水温40℃超えの衝撃。

では、実際の水温はどうでしょうか…?測ってみると、なんと水温は40℃超え!太陽光の影響を受けやすい表面はもっと暑く感じたので、40℃以上あったかもしれません。これでは、お米も生きものたちも危機的状況。過去には、夏の高温の影響でお米の収穫量が減り、価格が高騰した年がありました。今年も同じことが起こる可能性は十分にあります。

「気候変動」と聞くと、どこか遠い国のニュースのように思いがちですが、実際にはこうして、私たちの田んぼや食卓に直結する問題なのです。未来の食を守るためにできることは、まずは“いまの田んぼ”に目を向けることから始まるのかもしれません。

台所から気づく「気候変動」

さて、話は台所に移ります。

この時期になると、梅干しづくりの仕上げ「土用干し(どようぼし)」をします。これは梅雨明けの最も暑い時期(7月20日頃〜8月上旬)に、梅と赤紫蘇を天日で3日間干す工程のこと。

土用干しには、3つの大切な意味があります:

 1. 太陽光で殺菌し、カビを防ぐ

 2. 水分を飛ばして保存性を高める

 3. 果肉をやわらかくし、香りを引き立てる

昔は「土用のころに干すのが一番」とされてきましたが、私はここ数年、「もう、そこまで待たなくていいんじゃない?」と感じています。

というのも、最近は6月下旬~7月初めでも35℃以上の日は多く、土用と同じくらいの強烈な陽射しが続きます。そのため私は、天気予報を見て「3日晴れが続きそう」と思ったら、もう干してしまう派。

昔の人たちの知恵が詰まった“土用干し”ですが、昭和の時代と今とでは真夏の気温が2~3度も違います。夜露の降り方も、風の通り方も、もう「昔ながら」とは違う環境になってきてしまいました。気候変動が進む今、気候に合わせて梅干し作りもどんどん形を変えていく、そんな気がしています。

今年も干し始めた梅は、2日目にはすっかりしわしわになってしまいました。九州の強烈な日差しでは、もはや「3日干し」でなくてもいいのかもしれません。あなたの地域はどうですか?

わが家の土用干しの方法(実践編)

せっかくなので、我が家でやっている土用干しの手順をご紹介します。

< 用意するもの>

通気性のよいざる or 干しかご(竹・金属製)
梅酢の入ったボウルやタッパー
赤紫蘇(入れている場合は一緒に干す)
3日以上晴れが続きそうな日をチェック!

< 土用干しの手順>

 1. 梅を梅酢から取り出す
    → 手で優しく、拭かずそのまま。

 2. ざるに並べる
    → 重ならないように、皮が破れやすいので慎重に。

 3. 1日1〜2回ひっくり返す
    → 乾きムラ防止に。私は朝と夕方にそっと。

 4. 夜は取り込む
    →夜露でかびやすいので、夜は室内に取り込みます。

 5. 3日間干したら完成!
    → 梅酢に戻しても、そのままでもOK。

※赤紫蘇も一緒に干して、乾いたら砕いて「ゆかり」にすると最高です◎

最後に

田んぼの水が熱湯になり、台所の梅干しがあっという間に干しあがる、そんな2025年の夏。台所や棚田の風景の中に、“気候変動”を感じるようになりました。いつもより早く干し上がった梅干しに元気をもらいつつ、自分に何ができるか考え行動していきたい。そんなふうに思っています。


第11回:畑、棚田、渓谷、海……大人も楽しい、糸島の今年の夏の思い出ふりかえり。

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いとしまシェアハウス /
畠山千春さん・志田 浩一さん
いとしまシェアハウスは、「食べ物・お金・エネルギーを自分たちでつくる」をコンセプトにした、自然とつながるシェアハウスです。棚田に囲まれた集落の中で、田んぼや畑・猟を行い、築80年の古民家を改修しながら、様々な個性を持つ男女が共に暮らしています。
ここでは、体験したこと、つくり出したものをたくさんの人たちと“シェア”する暮らしの実験を行っています。

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