畑
毎日の食事をもっと楽しく、幸せに。「卯農園」が考える“おいしい食卓” #1
※ 全2話の 1話目
糸島市で農薬や化学肥料、畜糞堆肥に頼らず、できるだけ自然に沿った栽培で育てた野菜作りに取り組む「卯(うさぎ)農園」。取れたて野菜を直接届けるスタイルで、消費者とまるで家族のような関係を築いています。そんな卯農園が目指しているのが、“おいしい食卓”を届けること。卯農園が考える“おいしい食卓”とはどんなものなのでしょうか。楽しく、幸せな食事の時間を過ごすために今日からできることは何か。農園を営む三角章さん・麻里子さん夫妻に、教えてもらいました。
土づくりにこだわった自然の恵みを活かした農業
自然の恵みを活かした農業に取り組む「卯(うさぎ)農園」。糸島市の南部、雷山のふもとで複数の畑と田んぼを営んでいます。野菜を作っているのは、三角章さん・麻里子さん夫妻です。卯農園のこだわりは、自然の恵みを活かした農業。特に土作りに力を入れています。
「僕はもともと、農地を耕さない自然農からはじめたんです。でも、それでは自分が求める水準には育たなかった。新規就農者が借りられる農地は、土壌があまりよくないことも原因だったと思います。やっぱりちゃんと耕して、土を作っていかないとってことに気がついたんです」
そう教えてくれたのは、章さん。卯農園では、現在、「Bio LOgical Farming(バイオロジカルファーミング):生態系調和型農業理論」略して、BLOF(ブロフ)理論とよばれる自然界の法則に従った作物整理の科学的理解と、土壌分析・施肥(せひ)設計に基づいた科学的根拠を合わせた科学的・論理的な有機栽培技術を導入。理論に基づき、土に足りない栄養素をミネラル肥料やバーク堆肥という植物由来の堆肥によって補足。トラクターなどで攪拌し、ふかふかとしたバランスの取れた土壌を作っています。
学生時代の経験を生かして、農業をスタート!
今現在、夫婦二人で営む卯農園ですが、そのルーツは妻の麻里子さんにあります。北九州市で生まれ育った麻里子さんの実家は、スーパー。経営者だった父親が「今からの時代は、農業が大事。食糧危機がやってくる前に、農業部門を立ち上げよう」と話していたことがきっかけです。
「大学生のころに園芸の授業を受講していたんです。文系の大学だったのですが、学校の方針で学生が畑を耕して野菜を育てる体験をしていたんですね。それからずっと有機農業に興味があったので、父の言葉を聞いて、じゃあ私がやってみたいなって」。
そう語る麻里子さん。はじめは、父のスーパーに野菜を卸すことを目的に農業をはじめました。
「でも、一般的なスーパーで並べるには、有機野菜は価格が高かったんです。有機農業をしたいけど、スーパーに並べるなら価格が第一。それでも最初はスーパーで販売していましたが、結局価格の問題が解決できず。それに、自分がやりたいのはもっとお客さんに近い関係だと思い、直販方式に変えることにしたんです」。
その後、出会ったのが、大阪から移住してきた章さん。新たに章さん・麻里子さんの二人で農園を営むことになりました。
消費者の顔が見えるおもしろさ
現在は、隔週や月1回など、お客さんの希望に合わせた定期便の販売がメイン。子育て世代のファミリーや、体の不調を機に健康を気にするようになった方からの注文が多いといいます。さらに消費者と直接つながる直販ならではのやりがいもあると麻里子さんは話します。
「お店に卸していたころに比べて、よりお客さまの顔が見えるようになりました。定期便の野菜を箱に詰めるときも、購入してくれた人の顔を思い出すんです。あの人、この野菜が好きだったな、この人は嫌いだったなとか。そんなふうに思うことって、一般的な農家ではあまりないですよね」。
麻里子さんの言葉からは、まるでお母さんの仕送りのような優しさを感じることができます。一方で、章さんは「箱詰めの作業は苦手」と苦笑い。その言葉の裏には、章さんならではの野菜作りへのこだわりがあるからです。
「僕は、形が良くて栄養もあって、おいしい野菜を送りたいんです。曲がったきゅうりでも味は一緒とはいうけど、やっぱりちゃんと生育しているほうがおいしいし、届いた人も喜んでもらえるんじゃないかと思って考え過ぎちゃう。野菜作りには妥協したくないから」。
そんな章さんの隣で、「二股に分かれたにんじん、子どもたちは喜ぶと思うんだけど」と麻里子さん。ふたりの意見がぶつかることもありますが、それはどちらも、食べてくれる人のことを思うからこそです。
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