学生が挑戦・成長できるまち。糸島・前原に若者たちが惹かれるワケ #2

※ 全2話の 2話目

築150年の古民家で、地域住民と一緒に漆喰塗り

卒業後、いくつかの職を経験。現在は、学習塾経営者の顔も持つ

活動の場を貸してくれたり、何かあった時に声をかけてくれる前原の大人たちに見守られながら、日々、さまざまなチャレンジを行うNPO法人ENGAWA Project。現在は前原にあるシェアハウスを拠点に、ギャラリーの立ち上げ・運営、スポーツのパブリックビューイングなど5つの取り組みを行っています。

中でも松本さんが力を入れているのが、古民家を再生するプロジェクトです。前原商店街から自転車で15分ほどの場所にある、築150年ほどの古民家が舞台。隣接する農家さんがオーナーの物件ですが、老朽化に困っていたそう。「古いけど、昔ながらの立派な建物だから壊さず大切に残したい」と願っていたオーナーさんから、改修を松本さんらが無料で行うことを条件に、1年間は賃料ゼロで借りることができました。そんな古民家で目指すのは、前原の関係人口を増やすための拠点です。現在は「古いを楽しむ」をテーマに、学生たちが改修作業を進めています。

「時間的価値を大切にしたいと思っています。漆喰を塗ったり、古い階段を作り替えたり。大工さんに頼んだらきれいに仕上がるけど、自分たちでやったっていう時間がおもしろい。手間だと思うことを、あえて昔ながらの方法でやってみて、活動するメンバーはもちろん、ここに訪れる地域の人たちにその難しさを感じてほしい。日ごろ触れているものが当たり前でないことに感動してほしい」。

改修中の古民家の様子。古民家回収の様子をみている近所の人たちが、廃材などを譲ってくれることも多い

さらに、「ここが学生だけでなく地域のものだって感覚を地元の人にも持ってもらいたい」と松本さん。周辺住民を招いて、漆喰塗りの体験会を行いました。その参加者の多くが、隣接する地域にある新興住宅地・ 伊都の杜(いとのもり)に暮らす人たちだったそう。

「若いファミリーが多く暮らす伊都の杜は、前原やその周辺エリア以外から引っ越してきた方も多く暮らしています。せっかくなら、昔から前原で暮らしていた地元の人たちと伊都の杜の人たちがもっと交流したらいいのにと考えていました。若い世代は“ご近所付き合い”が億劫なのかな? そう思っていましたが、実際は交流の機会がなかっただけ。体験を機に、仲良くなった人たちがいて、とてもうれしかったです」。

2022年9月末には一部の改修が終了し、1階を学生が暮らすシェアハウスとして運営しています。その後は、2階をゲストハウスにする予定です。「学生と、ゲストハウスを利用する旅行者などいろんな考えや体験を持った大人たちが交流できる場所になれたら」と松本さんは、話します。

学生にとって、縁側のようなまちに

「このまちで、大学生が何かしらチャレンジできる状態を作っていきたい。大きなことじゃなくて、はじめてひとりで居酒屋に行ってみるのも立派なチャレンジ。いままでやったことがない経験を通して、いろんな人と話すことで学びにつながるから。今後は、プロジェクトメンバー以外の学生が、なにかチャレンジするお手伝いができたらいいなと思います」。

築150年を超える古民家は、おとなりの農家さんが所有しているもの。古民家の隣にある畑の一部分も貸してくれ、野菜の育て方を教えてくれることも

これから、10年、20年かけて学生と地域住民の交流が自然に起こっているまちづくりに取り組みたいと意気込みます。そんな松本さんにとって、前原はまさに、縁側のような場所です。

「縁側って、ふと行きたくなる居心地がいい場所。外との接点があって、かつては縁側でご近所さんとの交流が生まれていたんじゃないかな。前原も学生にとってそんな場所になればいいなって思うんです。キャンパスのなかで学べることは確かにいろいろあるけど、その内容が偏っていることへの違和感や物足りなさがある。ぼくは前原にきてそれに気がついたから、ほかの学生たちにももっと多様性がある世界がここにあることを知ってほしいし、体験してほしいんです」。

NPO法人ENGAWA Projectに込める思いを、そう語ってくれた松本さん。宿場町として繁栄した前原は、かつてさまざまなエリアから多くの旅人が集まり、盛んに交流が生まれたまちでした。これからは、若者たちが大人たちと交流しながら、挑戦と成長をする場となりそうです。学生が大人から学ぶだけでなく、大人が学生から学ぶこともきっと多いはず。若い力がキラキラと光を放つ前原のまちに、あなたも一度足を運んでみてはいかがでしょう。

語り部一覧

NPO法人ENGAWA Project /
松本崇人さん
熊本県出身。九州大学入学後は、「専門性が高いゼネラリスト」を目指すことを目的とし、自由度が高いカリキュラムが組める21世紀プログラム課程を専攻。心理学などを中心に学び、2020年度に同大学を卒業。いくつかの職を経て、現在は学習塾を経営するかたわら、地元農家の手伝いを通して農業を学んでいる。
2021年、「NPO法人ENGAWA Project」を設立。

みんなの感想

  • 匿名さん

    読みました。
    糸島、活性化頑張って下さい。
    若い力\(^o^)/万歳

    • 三ツ矢青空たすきスタッフ

      応援ありがとうございます。エンガワプロジェクトの皆さん、とてもお話しやすくてさわやかな若者ばかりです。体験に来た親子ほど年が離れているお客様も、大学生との交流が新鮮だったと喜んでくださいました。

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