畑
自然と共存するわかまつ農園が行きついたサステナブル農法 #2
※ 全2話の 2話目
「一番おいしい」を目指したら、「一番自然」に行き着いた
農作物も加工品も、自然由来のものにこだわっている若松さん。意外にも、もともとオーガニックとか、自然農法に興味があったわけではないと言います。どのようにして今のスタイルになったのでしょうか?
「毎日畑と向き合って生活していると、季節や旬というものに敏感になっていきます。例えば、いちごの旬は5月ですよね?でも、需要が高まる12月に向けて生産しようとなると、ビニールハウスなどの設備や薬剤など、自然にはないような環境を作って育てないといけなくなります。自然と共存するためにも、山が枯れないような自然の仕組みを農業で実践できないかなと思って」。
農業の世界に染まっていない、新規就農者だから感じた素朴な疑問。それをうやむやにせず、自身の納得のいく形で、若松さんは農業を続けました。
「多くの人にとって、食べ物を手に入れる第一の手段は『スーパーに行って買う』ことだと思います。でも、消費者の手元に野菜や果物が届くまでには、農家からJA、青果市場などの流通、そしてスーパーと、たくさんの媒介が必要。それは、安全な食べ物を安定供給するためにはとても大切な仕組みです。しかし、自分が生産者になってみたことで、消費者の選択肢を増やすためにも、これまでの仕組みとは違う形で商品を届けることができるのではないかと考えるようになりました。農作物を生産して、加工して、販売するところまでを自分でやれば、無理せず、おいしく、自然と身体にやさしいものを食べられるし、消費者に直接届けることもできる。そんな思いから、今のような事業形態になっていきました」。
自分の目で見て触れることから始めよう
食のこと、そして環境のことや未来のこと。ついつい肩ひじ張って考えてしまいがちですが、大きな方向転換のあと、しなやかにサスティナブルな生き方を実践してきた若松さんは、こんなふうに話してくれました。
「『冷暖自知』という言葉があります。目の前にある水が温かいか冷たいかは、自分で飲んでみなければわからないという、仏教の言葉です。ですから、まずは身近な生産者さんの食べ物を食べてみるのもいいきっかけかもしれません。皆さんが食べる野菜や果物が、どんな畑や果樹園で育って、どんな人たちの手を伝ってテーブルの上にやってくるのか。それを知ることだけでも、きっと興味が湧いてくると思いますよ」。
自分の目で見て、手で触れたものは、もう「自分ごと」。そんなふうに、自分の実感を伴って入れば、自然と向き合い方も変わっていく。無理せず、自分なりのやり方でいい、というのが若松さんのスタンス。
「私自身、手探りで農業を始めて、ひとつひとつやるべきだと感じたことを実直に積み重ねてきました。正解はわからないけど、自分の納得できないことはしたくない。自分の気持ちに正直に今日までやってきた結果、今ではお客さんが訪ねてくれ、喜んでくれるようになりました。自分の活動で、周りの人が喜んでくれるなら、こんなにうれしいことはないですね」。
やさしく、やわらかく、自然体。そんな若松さんの人柄は、まるで木漏れ日に照らされた甘夏みかんの実のよう。糸島の太陽と空気と水をいっぱいに吸い込んで、若松さんは日々新しいチャレンジを続けています。
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